進学/ポスドク志望の方へ

菅野・鈴木研究室への訪問や見学を歓迎します。
日程調整を行いますので、事前にE-Mailで連絡をしてください

菅野了次
鈴木耕太
松井直喜
                 進学志望者
adm.inquiry@assb.iir.titech.ac.jp
ポスドク志望者
phd.inquiry@assb.iir.titec.ac.jp

所在地

〒226-8501
横浜市緑区長津田町4259
G1-1
東京工業大学
すずかけ台キャンパス
G1棟10F

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日程調整をお願いします。

池松正樹 特任教授 
ikematsu.m.aa<at>m.titech.ac.jp
045-924-5409
すずかけ台キャンパスG1棟5F

不在の時 
菅野教授秘書室
045-924-5591

研究内容/解説編

電気エネルギーを化学エネルギーに変換し、蓄える材料を開拓する化学

リチウム電池

 新しい電池システムであるリチウムイオン二次電池は、環境やエネルギー問題の解決に寄与すると期待されている。この電 池を成功に導いたのが、インターカレーション反応を利用した無機固体物質の発見である。リチウムは最も卑な金属なため、リチウムを電池の導電種とした場合 に高い電位が期待できる。また、リチウムが軽いために重量あたりのエネルギー密度も高く、高電位・高エネルギー密度の電池として適している。しかし、リチ ウムを扱うために非水溶媒系の電解液を使う必要があることや、負極のデンドライトの生成の問題もあり、実用電池として開発されたのは1991年であった。 この電池では、正極と負極の双方にインターカレーション反応(構造中への挿入反応)を用いる。結晶格子の骨格は変化せずにリチウムだけが電気化学反応で出 入りする。この反応は可逆性に富み、デンドライト生成の問題もないため、現在のリチウム二次電池にはすべてこの反応機構の物質が用いられている。

 固体化学の立場からこのような材料を眺めると、リチウムのインターカレートに伴って、結晶構造や物性が変幻自在に変化する様は興味深くおもしろい。この 現象は電池の充放電特性も左右するため、電池反応に伴う構造変化を解明することは実用上重要である。現在は正極LiCoO2が主に用いられているが、さら に容量の大きな材料や、安価で環境に問題のないFe系材料などが次世代の材料として調べられている。

参考文献:構造からみたリチウム電池電極材料(GS Yuasa Technical Report)

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全固体電池

電池をすべて固体で作り上げる−これは、電池の研究に携わっている研究者の夢である。信頼性と安定性、安全性、可逆性に優れて液漏れもない、低温から高温まで広い温度 領域で作動する、などの数多くの利点があげられている。しかし、実際の固体電池の研究はあまり進んでいない。これは、液体並みのイオン導電性を持ち、電位窓も広く実用に耐 える固体電解質が見つかっていなかったためである。
 我々が発見したチオリシコン固体電解質(後出)は、固体電解質として十分な特性を 持っているため、この電解質を利用して全固体電池を開発している。固体・固体界面の接触の問題、電解質や電極シートを作製して電池に仕上げる際の技術的な問題など様々な課題がある。

固体酸化物形燃料電池・金属空気電気

 燃料電池が将来のエネルギー源として期待され、ポリマー電解質を用いた燃料電池の研究が広く行われている。ここで述べる固体酸化物形燃料電池はさらに未来型の燃料電池とされている。電解質には酸素イオン導電体であるジルコニアを用い、空気極に酸化物ペロブスカイト、燃料極に金属を用いたシステムで、通常800℃以上の高温で作動する。このため、できるだけ低温で作動する電池の研究が進んでいる。
 我々は電極材料に着目して研究を進めている。電極反応は、固相(電極および電解質)と気相との界面で進行する。できるだけ低温で電池を作動させるには、電極反応の詳細を明らかにする必要があると考えて、理想的な二次元界面をエピタキシャル電極膜で構築して、電気化学測定や散乱法などで調べている。

 固液界面では空気極反応が室温でも進行することから、金属空気電池として利用されている。上述のモデル研究を固液界面における空気極現象解析に展開し、反応速度や反応可逆性向上に向けた基礎研究を行っている。

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固体中を高速でイオンが動き回る材料を開拓する化学

「固体イオニクス」とは、固体の中を高速でイオンが拡散する現象と物質を対象にして、応用までを含む広範な学問領域である。「エレクトロニクス」は、固体の中を電子(エレクトロン)が拡散する現象と物質・デバイスを扱う学問で広く知られている。これに対して、固体の中をイオンが動く現象を取り扱う学問分野として、「イオニクス」と高橋武彦先生によって命名された。ヨウ化銀(α-AgI)は、147℃以上で銀イオンが高速で動き回る高イオン導電体であると見いだされて以来、数多くのイオン導電体が創り出され、イオン導電機構が調べられてきた。これまでのイオン導電体の研究のなかで、最高のイオン導電率を持つ物質は、1980年に発見されたRb4Cu16I7Cl13で、この物質は室温で0.37Scm-1という極めて高い導電率を示し、その値を超える物質は現在も見いだされていない。一方、リチウムをイオン導電種とする物質も数多く探索されているが、銀や銅イオン導電体ほど高いイオン導電率を示す物質は見いだされていない。また、そのイオン導電率の値も10-3Scm-1を超える程度である。
 我々が研究の対象としているリチウムイオン導電体は、リチウム全固体電池の電解質として期待されている。しかし、固体電解質として利用するには、イオン導電率がある程度以上高く、広い電気化学窓を持つ必要があるため、双方の性質を兼ね備えた物質はこれまで存在しなかった。最近発見した硫化物系リチウムイオン導電体は、結晶性物質でありながら最高のリチウムイオン導電性と広い電気化学窓を持ち、固体電池の電解質として期待されている。
 固体では、構成元素はほとんど動かず、融点近くになってようやく拡散し始めるのが普通である。ある1つのイオンがまるで液体並みに動き回る現象は、よく考えると不思議である。なぜ、動き回るのか、どうすればこのような物質を創り出すことができるのか、いろんな不思議があって、おもしろい。

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酸化物エレクトロニクスの化学

フラストレーション系化合物の物質探索
 酸化物を中心としたエレクトロニクス材料で、スピン・電荷・軌道の自由度のからみに基づく新奇な電子物性の発現を目指した物質探索を行っている。化学の立場での凝集体物性研究の特徴は、物質は自在に変化すると考える点にある。合成法を駆使して組成と構造を精密に制御してキャリア濃度を制御する。例えばパイロクロア酸化物を高圧合成で組成制御を行い、金属半導体転移に電荷の不均化が関与し、僅かな酸素欠損量が転移に影響することを明らかにした。スピンフラストレーションが生じる三角格子や四面体格子を持つFe4+,Ni3+,Mn3+の酸化物で、電荷や軌道の秩序配列と金属半導体転移や構造変化との関連を調べている。

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